人脈紹介は、紹介者のそれまで培ってきた信頼性を担保に成り立っている

 

ちょっと今から登場人物がややこしい話をします。

人脈づたいに仕事や探し物や探し人をすることって、結構よくあることじゃないですか、そこで起こった、「誰も悪人じゃないのに全員不幸」なトラブルの話です。

良かれとおもってつなげた人の縁の先で…

まず、この図をご覧ください。(出来事の内容と人物像は事実から多少改変しています)

時は2020年、あるところに『田舎移住のための家を探したい、そのためにまずどのような物件があるのか、いろんな田舎を見て回りたい』、そんな希望をもっていたAさんという人がおりました。

Aさんは自分にコネがなかったので、周りに「移住に詳しいひとや、移住して古民家を買った人知らない?」と聞いて回っていたようです。多少田舎暮らしをしたことがあった私のところに話を回してきたのは、尊敬する先輩であるBさん。Bさんはとても信頼できる人なので、その方のためならと、私はAさんから聞き取りをし、その結果もっと別の適任者がいるだろうという考えで、別の知人Dさんを紹介することにしたのです。

DさんもAさんと直接連絡をとり、Eさんという地方移住者で宿を営む方をAさんに紹介してくれました。その先のことは全然感知していなかったのですが、ある日突然Dさんから私に「事故ってる!」という連絡が….。

どうやらAさんは、Eさんのお宿にAirbnbを介して予約・支払いをし、そしてそこで清潔感や宿の施設に不満を持ったらしく、宿泊後のレビューで低い点数を入れたようなのです。

宿泊者が、宿が汚かったから点数を低くつける、なんの問題行為にも見えません。さあ、これの何が問題になったのでしょうか。

あいだに入る紹介者の立場

私はAさんの直接の知り合いではありませんでしたが、まっとうなキャリアを持っていて、なにより信頼できるBさんのご友人とのことでした。Bさんの頼みなら、ということで手助けを引き受けました。

Dさんも、私との関係性がもともとあったからこそ、まったく関係のないAさんの話を聞いてくれたわけです。

そしてDさんがEさんにAさんをつなげた、この時点で、EさんにとってのAさんは「Dさんの友人」という認識になるわけです。そしてDさんとEさんの間にもともとあった親しさや信頼関係を土台にして、Eさんは宿に泊まるただのお客さん以上の人としてAさんのことを認識し、力になってあげようという気持ちになります。

それなのに、Aさんは不満があったといっても直接何かを言ってくれるわけでもなく、宿の運営に不利益になる低評価レビューを残して去りました。そりゃあ、Eさんは嫌な気持ちになりますよね。

そして直接の知り合いで紹介者であるDさんに、「Dさんのご友人にはがっかりしました」とメッセージしたわけです。Eさんの言い分では、ほかにも備品を勝手に持っていった、という報告もありました。

そしてDさんはそれにびっくりして、また紹介者である私に、「事故ってる!」っというメッセージを送ってきたわけです…。

DさんがEさんからのクレームのどのような対応をしたのかはわかりませんが、私はDさんに、「ご迷惑をおかけして大変申し訳ございません!」とめちゃめちゃ謝りました。Dさんはマリアナ海溝のような懐の持ち主なので、「いろんな認識がズレてしまっていたのかな、僕の説明不足もあるし、宿と宿泊者の関係だからまあレビューは不問でいいとおもう。備品を本当にとったかだけ確認しておいて」との返事。さらには「まあ、もしAさんが必要とするなら、また助けになるから」という寛大さ。Dさんが気の短い人だったら、「お前の知り合いを善意で助けてやったのに、顔に泥を塗りやがって!」と私を責めてもおかしくない状況です。私はDさんを一生拝み倒そうと心に誓いました。

板挟みのわたし

その後当然、私もAさんの紹介元Bさんに、「Aさんこういうことをしたようで…」と報告します。そして案の定Bさんも、「えええ〜、まさか!なんだか迷惑をかけてしまったようで申し訳ない」という返答をします。Bさんも全く悪くないのに。むしろお互いわざわざ時間を割いて人助けをしている立場です。

Bさんに連絡した上で、私はAさんに直接事情を聞き取ろうとしましたがAさんとすぐに連絡がとれず、結局Dさんづたいの情報をありったけBさんに伝えて、私はフェードアウトすることに決めました。これ以上メンタルのエネルギーを吸い取られるのは避けたい…。連絡がすぐとれなかったAさんには、「もう今後わたしはお手伝いできませんし関与しません、詳しくはBさんに聞いて下さい」という旨をメッセージして、連絡をミュートにしました。

その後Aさんからは「誤解をしているから説明させてほしい」という連絡がありましたが、私は対応していません。私は冷たい人間なのでしょうか。

これにはいくつか理由があって、まず正直私の立場では、事実関係の正確な把握ができません。実際Bさん伝いでAさん側からみた事情が入ってきたとき、「宿がめちゃくちゃ不潔だった、レビューにはよかった面も書いた、備品は持ち出していない」と、全然違う風景が見えてきます。

それに板挟みの私としては、この事実関係は実はどうでもいいのです。なぜなら私がその説明を受けたところで何も解決はしないからです。

こみあげてくるのは、「まったく自分と関わりのなかったひとが、自分の知らないところで起こしたトラブルの尻拭いをなんでしないといけないんだろう」というおっくうさと、「自分の大事にしている人間関係と、自分の大事な人の持っている人間関係をないがしろにされて嫌な気持ちがする」しんどさ、この2点だけです。特に私のように社交的でない人間にとって、うまく築き上げられた人間関係というのは大変に貴重なので、それを足蹴にされたような印象を受けて、大変に悲しかったのです。

Aさんには、「私は怒っているわけではないですし、Bさんと自分、Dさんと自分の間に亀裂が入ったわけではないので、もういいんです。ただもうメンタルが疲労するのがいやなので手を引かせていただきます。誤解を解く必要があるのであれば当事者同士でお願いします」と伝えました。

とまあ、落着はせずとも一件強制終了したわけです。

この件からの学び

Aさんは、この紹介者たちのお互いに培ってきた関係性について、きちんと目を向けた行動をすべきでした。Aさんはもちろん法律的に見て、なんら悪いことをしたわけではありません。加害しようという気持ちもまったくなかったでしょう。ただ満足のいかなかった宿泊施設に相当の評価をしただけ。しかし、人間関係の連鎖を加味しないで事務的な処理をしちゃったことが結果として思わぬ加害性につながりかねない状況を招いてしまったわけです。自分の知り合いを紹介してくれる人って、自分の信頼性を担保にしているわけですから。ここでDさんの寛大さとBさんの気遣いがなかったら大惨事が起きていたかも。

ほんとみんな、特に日本の田舎関係なんか、誰かに何かを頼むときは….特にその人の人脈に頼る時は、その人の顔を潰さない行動を心がけないと、あとで全員詰むから….

そして善意でわざわざ自分の知人を繋げてくれている人の行為に後足で砂をかけるようなことをしていると、危険物扱いされて誰も助けてくれなくなります。サークルクラッシャーと呼ばれるような人物像があまりこれまで想像できなかったのだけれど、けっこうこの側面があるんだろう、と思い至りました。そしてその部分に繊細な考慮に入れられるかは、学歴やキャリアを持っているかどうかは全く関係がないようです。

私個人としては、Dさんの寛大さに感銘を受けてこうなりたいと思ったと同時に、Aさんのような鈍感力を発揮しないように気をつけて生きようと思いました。さもなくば、社会的に死ぬ。