2020年、京都の紅葉

 

きれいに晴れた日、京都の紅葉の名所に行ってきました。コロナ禍以前は外国人のガイドをしてきた知人と一緒に、観光地の様子見を兼ねた久しぶりの外出です。

無鄰菴

まず訪れたのは、岡崎にある無鄰菴(むりんあん)。現在1時間に20人しか入れない予約制となっていて、紅葉の時期でもゆっくり景色を楽しめます。

ここはもともと総理大臣を2度つとめた山縣有朋(やまがたありとも)の別荘として、岡崎周辺に何もない頃に作られました。明治時代、岡崎は別荘地として開発されたのですが、無鄰菴がその別荘地計画の端緒だった模様。こじんまりとした邸宅から眺める庭園は明治時代の傑作と名高いものです。東山を借景に、手前にくるほど低くなってゆく植木や岩石によって、景色の重なりを味わうことができます。

ちなみに国の指定する「名勝」というのは、庭園や橋・峡谷・海浜・山岳など芸術上または観賞上価値が高い土地のことで、重要文化財と同格だということ。なんとなく風光明美な場所のことだとは思っていましたが、無鄰菴で説明を受けるまでそんな定義があるとは知らなかったです…。

色彩の美しさに癒される一方、庭の造形もかなり興味深い場所です。まず庭の水は琵琶湖疏水から引いているということ。

また面白いのが日本庭園には珍しく、芝生を敷きつめてあるということです。これは山縣有朋公が、日本庭園の定石であるコケを好まず、また故郷の山口県の景色に近しいものを望んだから、だとか。さらに野草を適度に生やすように芝を管理している様子が敷地内の洋館でビデオ展示してありました。パンフレットには庭師の目から見た解説がされていたり、公式サイトに庭の手入れを説明するブログもあって、庭を作る側の視点がよく理解できます。そういうところが見えると、また観賞の面白味が増します。

無鄰菴のコミュニケーションデザインは意図的にリピーターや地元民の関わりを増やすような戦略が組まれていて、2020年度グッドデザイン賞を受賞しています。入場券と一緒に配られる注意書きの項目ひとつとっても「なぜダメなのか」が英語と中国語併記で書かれていて、国際的なコミュニケーションを丁寧にデザインする担当者がいることが感じられました。

28日はニワの日ということで35歳以下無料だったり、週に二回、午後から在釜といってお抹茶を振る舞う会があったり(平日ですが…。)わたしもまた訪れたいという気持ちを抱きました。

東福寺


その後は少し足を伸ばして、臨済宗・東福寺に行きました。

紅葉の名所と名高いだけあって、視界一面が鮮やかな赤や黄色。
最近京都の紅葉は葉っぱがチリチリになっていて、完璧な美しさというわけではありませんが、苔と紅葉の対照的な色彩や、日の光が散った紅葉に反射して赤く広がるところなど大変綺麗です。

肝心の混み具合はというと、見頃時期にしてはかなり穏やかでした。数年前にわたしが外国人ゲストの案内で訪れた時には「橋の上は絶対に立ち止まらないでください!進んでください〜〜!」と必死の案内の声が飛び交っていましたが、今年は立ち止まって写真を撮っている人がいても「ゆっくり進んでくださいね〜」程度。平日でもありましたし、スタッフも観光客もゆったりしていました。


今年は何割くらいの人出なのですか?と案内係の方に聞いたところ、「はっきりとはわからないですが、例年に比べてかなり少ないです。普段なら、平日でも人酔いして気分を悪くする方が出るほどなんですけど。」という答えでした。

京都市観光協会データ月報(2020年9月)によると、「京都市内64ホテルにおける2020年9月の日本人延べ宿泊客数は、前年同月比23.9%減となり、4ヶ月連続で前月を上回るとともに、前年同月の約8割の水準にまで回復した」「宿泊予約サイトの利用状況に基づく10月の国内宿泊予約需要を見ると、前年をわずかに下回る水準にまで回復しており、年末まではある程度この勢いが続く見込みである。」とあるので、ある程度国内観光は戻ってきているようですね。実際、全員マスクをつけた団体ツアーもちらほら見かけました。

1日の総括

自分の部屋でコロナウイルス関連のニュースを見ているだけでは、暗澹とした気分になるばかりだったりします。でも、自分で出かけてみて周りを観察するから「これだけの人が感染症対策をした状態での観光に順応しているのか」と分かるように、肌身で感じることの重要性を再確認した日でした。もう少し街の様子を観察し、ニュースで見聞きする情報との齟齬を埋めようと思います。

そして、全く出かけない日々が続いたので、久しぶりの遠出にはかなりの疲労感がありました…。慣れって怖い。ここまでの観光地に行かずとも、散歩を日々の予定として組み込むべきなのかもしれません。