わたしは考えることが大好きな人間ではないし「頭がいいんだね」という言葉が寂しい

 

色々とここには考えをこねくり回して文章を書いてきてはいるし、なにせ話し言葉もこういう感じだったりするので「頭がいいんですね」とか「考えるのが好きなんですね」とのたまう人が時折現れます。

だけど、それに関しては、違う!と声を大にして叫びたい。おこがましく聞こえていたらどうしよう、と思うのですが、でも違うものは違います。「中学生からソクラテスが大好き」「考えることが大好きなので理論家になりたい」と言って憚らない同級生もいましたが、それはわたしとは別の生き物です。

わたし自身は、考えないで生きられるならそうしていました。

「頭がいい」というのは状況を観測・分析して、それを自分や周りが善く生きるために活用できること。そんな賢さを持っていたら、こんなに自分自身が生きづらい感じにはなっていなかったはず。なんならもうちょっと楽して居場所を確保するとか、お金を稼げていたと思います。

好きなのは、五感を満たして楽しむことです。できたら、ぼーっとしながら散歩して、ちょうちょを追っかけて綺麗なものに恍惚とするだけで生きていきたい。

好奇心は強く、新しいことを知るのはとても好きです。子供が「なんで?なんで?」と質問攻めしているのをみると、気持ちがよくわかります。わたしも今でもナゼナゼ質問ばかりしてしまうから。物事の仕組みを知りたいというのは根源的な欲求だと思います。

でも基本的に知ったらそれで満足してしまうので、自分で探求をしなくても別に不満を覚えたりしません。探究心はずぼら心と相殺されていてあまり発揮されないのもあります。

誰かが既に明らかにしているけど自分が知らない、そんな数多のことが世の中にはあって、私はそれを読んだり見ているだけで十分に楽しい。世の中には良質のコンテンツがすでに溢れていて、本当に人生の時間が足りないと思います。老眼になったら小さい文字が見えなくなって、ちょっと古い新書とかすぐに読めなくなるんじゃないか、思うと急かされるように本を読んでしまう。

自分が観察・発見したことを別に体系的に記録して他人に教えたいとも思いません。でも自分が知って「楽し〜!」と思っているだけじゃお金は稼げないし、ご飯を食べていけないのが痛いポイントです。

デフォルトのわたし

料理を楽しんで美味しいと言いながら食べ、散歩に行って空の色が刻一刻と変わるのを1時間でも2時間でもぼーっと眺め、一日一回誰かが作った素敵な物語に触れて、あったかいお風呂に入ってあったかい布団で寝られたらそれで幸せ。

なので、物事をパズルみたいにこねくり回すことは、趣味でも何でもなかったのです。

ただ、思い通りにならないことにぶち当たることが多かったから、考えざるを得なかったというか…自分の挫折を消化分解するために考えないと前に進めなかったので、こんな感じになってしまったんです。

考えるのはしんどい。ものすごくエネルギーを消費する行為ですし、大体なにかとぶつかるために必要としてきたので、全然いい印象がない。

↑こうなって、逃げていたら体力が切れてきて追い詰められたので…

窮鼠猫を嚙んだ、というか。

でもいったん言葉やものの見方を獲得して、見えなかったものが見えるようになってしまったら、考えることを止めて生きることはできなくなりました。今さら理不尽とか不条理とかを、「みんな我慢してるから、そうなんだな」とか「世の中はこういうものなんだな」って自分を納得させることがもうできないので、むしろ損な気がします。

哲学も別に全然好きではないですが、ただ自分に居場所がないと感じたりつらかった時に、哲学者が悩んだ内容は自分の悩みにも役に立つという理由で、心のしこりを解体する武器として使っています。

例えば『狂気の歴史』や『性の歴史』といった著作を残した思想家ミシェル・フーコーは同性愛者であり、時代の中で葛藤し、自殺未遂までした人物です。 そういう人物が持てる限りの思索と語彙を尽くして残した書物から学べることは多いです。読み解くのは骨が折れますが自分で考えるよりは手っ取り早いですし。

だから自分に必要がない場合、知っていなければいけないという内容でもないし、知らなかったら恥ずかしいというものでもありません。そもそも「そんなことも知らないの」って人を馬鹿にする人は、なぜ自分が知っていることを当たり前のように他人が知っていると思うんだろうか…。

また、「頭がいいんですね」って言われて嬉しい人って、どういう感覚の持ち主なんだろうかと不思議に思います。学生時代テストのランキング上位になって得意満面になったことでも思い出させるのだろうでしょうか。

まあ、考えてもわかることではないんですけど…。

 

私は「頭がいいんだね」っていう言葉を聞くと、「自分と違うんだね」って言われている気がして寂しくなります。どうせなら「その着眼点がいいね」とか「面白い事考えてるんだね」って言われたら嬉しいんですけどね。

「褒めているのに、否定するのか」と思われるのが嫌で反論がしにくい言葉、「頭がいい」。でもその言葉をかけられる人間が、微妙な気持ちになっていることも、あるのです。