日本語/英語でズレがある単語: privilege=特権?

 

全く参考にならないわたしのキャリアの話 (1)でちらっと「特権」という言葉を出しました。

全く参考にならないわたしのキャリアの話 (1): 自分で頭を使わない子供

2020年11月21日

わたしが恵まれた境遇という意味で使った「特権」という単語について説明するために、この記事を新しく書いています。日本語で特権と言っても伝わらないと思ったんです。

なぜ伝わらないか、というと私が念頭においている「特権」の意味合いが、特権の英訳語に当たる “privilege” から取ってきたものだから。

英語の “privilege” が包括する意味の範囲と、日本語の「特権」が包括する意味の範囲がちょっとずれているんですね。

日本語の「特権」

日本語では、なんだか庶民には関係のない単語に見えるんです。例えば…

【特権】

特定の身分や地位の人がもつ、他に優越した権利。「外交官特権」

コトバンク(デジタル大辞泉)

【特権階級】
特別の権利や地位を享受する階級。中世の貴族や僧侶、近代の資本家など。

goo 辞書

警察官や弁護士など特定の職業にのみ許された権利か、社会階級のおかげで成り立つ優位性、そう言うものですね。

英語の “privilege”   @英和辞典

まず英語の “privilege” をWeblio英和辞典で引いてみます。

1.a(官職などに伴う)特権,特典,特別扱い
the privileges of birth 名門の特権

1.b(議員が議会で罰を受けることなく自由に発言・行動できる)特権
a breach of privilege 特権濫用

2[単数形で] (個人的な)恩典,(特別な)名誉,光栄
It was a privilege to attend the ceremony. その式典に列席することは特別な名誉だった

3[the privilege] (基本的人権による)権利
the privilege of citizenship 公民[平等]権

weblio英和辞典

日本語の「特権」はweblioでいう定義1の部分に当たるようですね。

英語の “privilege”   @英英辞典

しかし英英辞典を見てみると、実はもう少し意味に広がりがあることがわかります。

a special right, advantage, or immunity granted or available only to a particular person or group. [特定の人や団体のみが与えられる/保有する、特別な権利・優位性・免責条件]

Cambridge Dictionary(*日本語訳 ごろびよ)

という日本語の「特権」が持つのと同じ意味もあるのですが、

an advantage that only one person or group of people has, usually because of their position or because they are rich [限定された人、もしくは団体がもつ優位性で、たいていは地位があるか経済的に豊かであるから得られる]

Cambridge Dictionary(*日本語訳 ごろびよ)

と言う意味があるんです。ここでのツボは、この意味の”privilege”をうまく一語で表す日本語がないこと。ソーシャルな記事なんかでは「特権」と訳されていることが多いので、わたしもそれに習った訳語にしました。なんか自分には届かないもの、というイメージだと同じかな、と思いますし。

階級に関係なく恵まれた境遇にいることを “You are privileged.” (あなた「特権」を持っているんだよ=あなた恵まれてるんだよ)と言ったりします。もしかしたら、富の再分配についてうるさく語られている近年の用法なのかもしれませんが…。

つまりどういうことが言いたかったのか

私の言いたい「特権」はこの動画が示しているのと同じ意味です。自分は何もしていないのに、自分が選んだわけでない環境のおかげで有利な位置に立っている、ということ。

ちなみにこのワークショップが取り上げているのは、家庭環境や経済状況だけですけどね。

両親揃っていても、学費の心配をしなくてよくても、障害があったりいじめにあったり鬱で働けなくなってしまったり、それは経済状況には関係ないし、甘えでもなんでもないと思います。

それじゃあ愛想と社交性と華麗な見た目を持って生まれたら、それも特権になる、と言えませんか。個人の特質や見た目で貶められたり持ち上げられたりする社会なのだから…。

数値で補足できないことを加味しないで「恵まれているのに甘えているお前が悪い」と人を責めることは誰にもできないはず。

上の動画についているコメントにこういうものがありました。

人それぞれだと思う。
一見すると恵まれた人生を送っている人も発達障がい持ちだったり、いじめを受けたり家族関係が良くなかったりして経済的には不自由なく過ごせても精神的な面では苦しかったりしてる事もある。自分が人より経済的に恵まれてたからと言って後ろめたさや貧困層に対して罪悪感に苛まれる必要はない。
そもそも比べる事ではない。自分と同じ人生を歩んでる人はいないから。元々の素材が違うんだから。

だけど恵まれた事に感謝をする事は大事だと思う。

まとめ

違う言語同士で、意味が完全にA=Bと重なることってなかなかないと思います。「髪の毛」「りんご」とかわかりやすく目に見える物質だったら大体一致するかもしれないですが。

目に見えない概念、感情、関係性などを意味する単語を扱う時は特に、意味にズレがあるかもしれないことを心に留めておくと理解が進みます。

英語を使っていると、だんだんその訳語の日本語にもそんな意味がもともとあったような気がしてくるんですけど、英語話者同士でしか通じない日本語になってくるので、よくないなと思います。

多くの人に理解されやすい日本語の使い手として、わたしはまだまだ修行途中です。