コロナウイルスワクチンを職域接種で打ってきた

 

先日、新型コロナウイルス感染症のワクチン1回目を打ってきた。区分は、職域接種だ。わたしは頑張れば “複業” と言えそうな働きかたをしているから、ギリギリあてはまりそうな職域接種にて予約することができた。わたし自身はフリーランスだし、どんな組織にも法的に所属していない。だから職域は無理かな…と思っていたのにもかかわらずだ。「職域接種にあてはまれば自営業の20-30代だとしても早期にワクチンを打つことができる可能性がある」と念頭に置いた上でチャンスを探しておけば自分でも発見できていたのかもしれないが、半ば諦めていたので自分で情報を探すことがなかった。だから友人に教えてもらってこの機会を得ることができたことは幸運としか言いようがない。

区分上の都会に住んでいるから、地域のワクチン予約はとても取りづらい。まだ40代の接種も終わっていないというからわたしの年代は後回しだ。そういう事情だけではないけれど、日本全体の20代・30代のワクチン接種率は、2021年8月1日時点で各20%ほどらしい。

クリニックではそもそも年齢的に予約を受け付けていないところが多いし、自衛隊運営の大規模会場のウェブサイトにはアクセスするために何時間も待つ必要がある。タイミングやクリニック次第でたまに枠が出るらしいけど、もうこれは完全に情報戦だ。競争率の高い保活を制した友人は素早いローラー作戦でワクチン予約もクリアし涼しげな顔をしていたので、さすがだなあと舌を巻いた。

反面わたしはあまりうまく動けずうろたえていた。会社に所属しているわけでも専門士業で開業しているわけでもないから当然そういう職域接種からは除外される。フリーランス協会には入っておらず、せっかくのフリーランスのワクチン職域接種は享受できない。アルコールを扱う飲食店に関わっているわけでもないので、ビール酒造組合のワクチン接種にも行けない。わたしに当てはまりそうなチャンスは無さそうに見えた。仕方がない、どうせいつも自粛みたいな生活だし健康に気をつけながらキャパが空くのを待とう…と思っていたところ、状況は急に転回することになる。イベント運営などをする友人から「文化関係者の職域接種に空きがあるから一緒に行こう」と連絡がきたのだ。

わたしは時折写真の仕事をすることがあるし通訳案内士ライセンスを持っているので、当てはまると言えば当てはまる。でも公演を控えている演劇関係者なんかではない。わたしがこの枠を取りに行ってもいいものか、自分勝手にもっと必要としている人の枠を奪ってはいないか、と迷いがあったのは事実だ。ずるいことはしたくない…。最終的には、社会通念に照らし合わせたとしても何も後ろめたいことではないはずだ、友人もわたしが当てはまると思って教えてくれたことだ、そう自分を奮い立たせるような形で予約ページに手を伸ばした。

特に所属先の証明などをすることもなく、住所が会場のある地区でなくても受けられるという。接種券番号と住所氏名、自己申告の職業名だけであっさり予約がとれ、少々拍子抜けしてしまった。接種日は予約の3日後。かなり急なことだった。時間に融通が効く自営業なのはこういう時に便利だ。

文化関係者の職域接種を教えてくれた友人は、地域のワクチン接種情報を自分から取りに行っている中で募集がTwitterに上がっているのを知ったらしい。心から思う、持つべきものは聡い友人だと。わたしも自分の予約後、もう一人別の絵描きの友人にこの情報を回したので、地域のクリニックで受けるよりも早くワクチン接種をうけることができた30代が3人増えた。地域でうけるとしたら11月あたりになっていたんじゃないか…。

現地のオペレーションはあまりにもこなれていて、様子をゆっくり観察する余裕もなかった。どんどんベルトコンベア式に作業は進み、会場に到着して15分ほどで接種は終わっていた。建物を出るとひどく喉が乾いているのに気づいて、500mlのミルクティを買って一気飲みした。飲み終わりにハァッと吐き出た息と同時に、腹の底に溜まっていた不安が少し流れ出た気がした。

ちなみに副反応は軽い筋肉痛で終わった。モデルナのワクチンだったので2回目の副反応がより強いと聞く。すでに決定している2回目のワクチン日とその次の日のスケジュール表に “休養” と書いて、おかゆパックを買い込んでおいた。

こういうことがあると、助け合える身内を持つことの尊さを実感すると同時に、そういう関係性や情報、あるいは職を持たない人がどんどん後回しになる現状にやるせなさも感じる。一回落ち込んでからの回復期にある今の自分にできることは本当に些細なことだけだから、より強くそう思うのだろう。自分の会社を持っているような同年代の知人が、自社で職域接種を申し込み社員と家族みんなにワクチンを打たせているのも目にしたからというのもある。

望むことが自分の力不足で叶わない、対してあの人は…と考えると、とたんに心がざわざわし始めるから、その気配を感じて「自分には自分の役割があるから」とひとりごちて目を伏せ、息を整える。とにかく自分の目に見える範囲を自分の力でケアできるようになろう、その能力がまずほしい。まず、ワクチンを打って当たり前、の世界線に住んでいることにも感謝しながら。